借地上の建物の増改築(弁護士 五明豊)

借地の契約書において,借地上の建物の増改築をするときには,事前に賃貸人の書面による承諾を得なければならないという制限条項を置くことがあり,このような制限条項は有効です。

 

仮に,このような特約がなかったとしても,賃借人は用法遵守義務・保管義務を負担しておりますので,原則として,賃借人が無断で増改築を行うことは許されません。

 

それでは,賃貸人は,増改築に関してどのような主張をすることが考えられるでしょうか。

 

1 損害賠償

 

 賃借人が無断で増改築をし,それにより賃貸人に損害が発生した場合には,債務不履行に基づく損害賠償を請求できる可能性があります。

 もっとも,増改築により賃貸人が具体的に損害を被る場合というのは多くはないかもしれません。

 

2 解除

 

 次に,賃貸人としては,無断改築を理由に契約解除の主張をすることが考えられます。もっとも,増改築をすれば直ちに契約解除が認められるわけではなく,信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない場合には,解除は認められません。

 

 信頼関係の破壊に関する判断要素としては,無断改築が小規模か大規模か,復旧は容易か否か,借家の利用上必要かつ有益であるか否か,賃貸人の制止を振り切って増改築したのか否か,増改築による賃貸人の不利益の程度等があげられます。

 

3 地代の増額

 

 賃貸人は賃借人に対し,増改築を承諾する代わりに地代の増額を求めることが考えられます。

 

4 承諾料

 

 賃貸人の不利益のもと賃借人が利益を受けることになるため,賃借人から賃貸人に対し,増改築の承諾諾料が支払われる場合があります。一般に,全面改築の場合には借地権価格の3%前後が承諾料の目安となります。

 

5 事件の流れ

 

(1) 賃借人による無断改築がなされた場合

 

  上記1から4につき,賃貸人は賃借人との間で話し合いをし,話合いでまとまらなければ,解除等を求めて訴訟提起することが考えられます。

 

(2) 賃借人が事前に賃貸人の承諾を求める場合

 

  まずは両者で協議を行い,上記3,4の金銭の支払いを話合います。それでも話がまとまらない場合には,賃借人は,裁判所に対して,増改築についての賃貸人の承諾に代わる許可の申立てを行うことになります。なお,この許可は「土地の通常の利用上相当とすべき増改築」であることを要するため,申立前に,少なくとも建築確認はとっておく必要があります。

                                           

 

 



投稿者 小山法律事務所 | 2013年6月26日 17:55

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