M&Aと正常収益力分析
M&Aと正常収益力分析
弁護士 小山 治郎
1 M&Aで、他の会社や事業を買収する場合、財務DDにおいて、当該他の会社や事業(以下「ターゲット」といいます。)の正常収益力を分析し、直近年度等の営業利益を修正します。EBITDAをもとにターゲットを評価する場合、その重要な構成要素である営業利益は、一時的・非経常的収益・費用の影響を排除したものであるべきだからです。
そこで、ターゲットの持続可能な収益力を示すため、直近事業年度等の実績からゆがみを取り除く必要があり、これを正常化調整といいます。
また、ターゲット買収後に費用が増加したり減少したりする場合があり、これも調整する必要があります。これをプロフォーマー調整といいます。
以下、具体例を挙げて、正常化調整とプロフォーマー調整を検討します。
2 正常化調整
一時的・非経常的収益・費用が特別損益として計上されている場合は調整の必要はありませんが、関連法規の変更や特殊な事象による特需、例えば新型ウイルス感染症によりアクリル板製造会社は売上が例年より増加したはずですが、これは一時的な収益増加とすべきでしょう。
また、直近事業年度が創立20周年で、特別賞与を支給した場合、当該賞与は通常労務費や給料手当として製造原価や販売費・一般管理費に計上されますが、明らかに一時的費用ですから、売上原価等から控除すべきです。
3 プロフォーマー調整
ターゲットが中小企業の場合、オーナー経営者所有の不動産を相場より低い賃料でターゲットに貸し付けている場合があります。M&Aにおいてオーナー経営者が当該不動産を買主に譲渡しない場合、買主はM&A後、当該不動産を売主から正常賃料で借りるか、他の貸主から正常賃料で借りることになります。これはM&Aにおいて売主から独り立ちすることによる費用増加ということでスタンド・アローン・イシューといいます。すなわちスタンド・アローン・イシューに伴う増加費用は正常収益力算定に当たり調整(減額)する必要があります。
投稿者 小山法律事務所 | 2021年5月15日 08:39