福島レポート③ (弁護士 小山治郎)
福島原発事故における放射能の影響を1年間にわたり研究してきた米国の放射能専門家調査団は、原発周辺長年居住不可能となるものの、健康への影響は極めて小さいと見られるとの意見を発表した。
その報告の中で、チェルノブイリ事故と比較しているところは興味があり、説得的である。福島原発事故の後、被ばく線量が最も高いとされる放射能の煙を浴びた最初の1万人のうち、10ミリシーベルトを越えたのは73人に過ぎなかった。事故が発生した施設内で処置に当たっていた作業員でも、平均9ミリシーベルトにとどまっている。
一方、チェルノブイリでは石棺による封印作業を行った50万人の作業員の平均被ばく線量はその10倍以上であった。
この結果から、調査団は、福島で放射能を浴びた人が、癌を発病するリスクは約0.002%、癌で死亡するリスクは0.001%高まると推定している。また米国人調査団の一員は、東京からワシントンまでのフライトで自然に浴びてしまう放射線量の方が福島原発の現場で浴びた量より多いくらいだと述べた。
もちろん、上記見解は楽観的過ぎるとする向きもあろうが、26年前のチェルノブイリ事故の健康への影響を踏まえての見解であり、説得的である。
また同調査団は、福島原発の健康被害は、放射線量よりも、自宅から離れて避難生活を送ることで受ける精神的トラウマによるリスクが大きいとしている。
先日、原発事故による避難先でうつ病になり焼身自殺したとの記事が新聞に出ていたが、上記調査団の意見を裏付ける出来事である。
われわれは、福島原発事故で悩んでいる方々の心労を少しでも和らげることをしたいと思う。
投稿者 小山法律事務所 | 2012年5月21日 10:00