契約を交わす前に (弁護士 川野義典)
契約書のチェック、作成にあたっては細心の注意を払う必要があります。
このことについて、昔からよく引き合いに出されるのが、シェークスピアの「ベニスの商人」です。
主人公のアントニオは、金貸しであるシャイロックからお金を借りる際に、「約束の日までにお金を返すことが出来なければ、自分の肉1ポンドを与えなければいけない」という内容の契約書を交わしてしまいます。
結局、アントニオが約束の日までにお金を返すことが出来なかったことから、シャイロックが裁判所に訴えを提起したところ、裁判官は次の様な判決を言い渡しました。
「契約書の通り、シャイロックは、アントニオの肉1ポンドを切り取っても構わない。
但し、この契約書には血を与えるとまでは書かれていない。だから、血を一滴も流してはならない。」
確かに、これは極端な例かも知れません。
しかしながら、この「ベニスの商人」の話は、私たちに貴重な教訓を与えてくれます。
この話を読んで、「契約書なんて、会社間の話でしょう?自分には関係無いよ」と思った方もいらっしゃるかも知れません。
それでは、「契約」という言葉を「約束」という言葉に置き換えてみてはどうでしょうか?
今までに、友達どうしでお金の貸し借りをしたことはありませんか?
離婚の際に、慰謝料や養育費の支払いについて約束したことはありませんか?
相続が発生したときに、誰に、どの財産を分けるのかについて、相続人間で決めたことはありませんか?
振り返ってみると、私たちの日常生活には様々な約束事が溢れています。
法律相談をさせて頂く際に、時々「相手から書面を取っているので、大丈夫ですよね?」とおっしゃるご相談者様がいらっしゃいます。
もちろん、しっかりとした書面が作成されているため、「裁判になっても勝てる可能性が高いと思いますよ」とお答え出来るケースもあります。
しかしながら、書面が不十分なために、「残念ながらこの書き方では、裁判になった時に勝てない可能性もあります」とお答えせざるを得ない場面に遭遇することもあります。
約束をする際には、特に重大な約束事をする際には、その前に、是非一度弁護士に相談してみては如何でしょうか?
投稿者 小山法律事務所 | 2012年4月30日 09:00