福島レポート⑫ (弁護士 小山治郎)
7月21日付け朝日新聞によりますと、東京電力が発注した福島原発の復旧工事で、下請け会社の役員が昨年12月、厚さ数ミリの鉛カバーで放射線の線量計を覆うよう作業員に指示していたということです。
作業員の年間被曝量は50ミリシーベルト以下に制限されていますが、線量が高いところで作業すれば、すぐに仕事が無くなってしまうために、このような偽装工作が行われたものと思われます。本来役員がこのような違法な指示をすればそれを拒絶するのが常識ですが、作業員には支えなければならない家族がいて、簡単に拒絶することもできないのだと思います。チェルノブイリほどの悲劇ではありませんが、福島原発事故でも、現場作業員のこのような犠牲の下に事故の復旧作業は進んでいることは明らかであります。
そもそも原発は平時でもある程度の被爆を覚悟した作業員の犠牲の下に維持されているのです。私は原発そのものが国民の生存権を無視したものでないかと思います。健康で文化的な権利保障のうち「健康」を無視した発電所だからです。しかし今すぐ原発を全て廃炉にすることはできませんし、すべきものでもありません。
毎週金曜日の首相官邸前の原発再稼働反対デモは、数万人の規模に膨れ上がっていますが、無条件で再稼働反対という人たちは少ないのではないかと思います。福島原発事故の原因が十分に解明されていないのに再稼働することに反対ないはずです。今後無条件で再稼働を禁止すれば、国民生活は大打撃を受けます。特に原発に依存して生計を立てている地元の方々のことを考えれば、安全を十分に確認した上で再稼働すべきだと思います。そして他の再生可能エネルギーで雇用を確保しつつ、徐々に原発を廃炉にしていくべきだと思います。
投稿者 小山法律事務所 | 2012年7月23日 10:00