福島レポート⑤ (弁護士 小山治郎)
5月27日、福島県双葉郡浪江町の自営業者の方(62歳、Aさん)が、一時帰宅中に自殺した。Aさんは、民間の借り上げ住宅での生活に耐えられなかったのではないか。現在物質的には不満がなくても、近隣との絆に欠け、孤独感や将来に対する不安に耐えられなかったのだと思う。
浪江町は、福島第1原発から10キロのところにあり、今回の原発事故で特に高放射線量の地域である。もちろん警戒区域に指定されている。
福島原発事故による被災者は、これまでの自然災害と異なり、この先避難が何年続くか分からず、悲観的になり、絶望感や孤独感を抱きがちである。突然故郷を奪われ、仮設住宅や民間の借り上げ住宅で生活している被災者はうつ病になりやすい環境にある。
浪江町は人口2万人ほどの小さな自治体であり、住民間の絆は強かったと想像される。しかし民間の借り上げ住宅での生活は、その絆がなくなる。まして家族や、家、仕事を失い、将来を見通せない状況にあれば、絶望感や孤独感に耐えられなくなる。
精神科医や民生委員の方々による被災者の心のケア、そして被災者が新たな近隣との絆を回復できるよう、行政が音頭を取ることが望ましい。
投稿者 小山法律事務所 | 2012年6月 4日 10:00