家業的零細企業と事業再生 【弁護士 小山治郎】

最近の事業再生は、第二会社方式が多いです。これは、窮境状態にある会社が、会社分割又は別途設立した会社に事業譲渡し、その会社は倒産処理して消滅させるものです。窮境状態にある会社でも、事業価値のある部門は存続させる方が雇用確保等、社会的観点からも好ましいことはいうまでもありません。第二会社方式においては、通常、再生ファンドの支援を受けて、重要な資産を第二会社に移転すべく債権者と条件につき交渉することになります。

 しかし小規模企業の中には、工場社屋も借り物で、旧式の機械を使い、代表者の家族を中心に、実質的に家業として経営しているところもかなりあります。このような会社(以下「家業的零細企業」といいます)は、年商が1億円以下で、従業員は代表者を入れて5、6人程度です。家業的零細企業が窮境状態にあっても再生ファンドは見向きもしないのが普通です。また目ぼしい資産で担保価値のあるものはないのですから、再生ファンドを利用する必要性もありません。それでは、事業価値はあるが多額の債務を負っている家業的零細企業が第二会社方式で事業再生するにはどうしたらよいでしょうか。

 このような家業的零細企業は、金融機関から大幅な債権カットを受けなければ、いずれ倒産することは明らかです。しかし民事再生申立には多額の費用がかかりますし、仕入先等の信用も失います。金融機関に大幅な債権カットを申し入れても、まず相手にされません。

 私は、従業員である親族の1人に退職金を支払い、その元従業員が退職金を資本金として第二会社を設立し、その第二会社が機械等の会社資産を簿価で買い取る方法により家業的零細企業を事業再生する方法をお勧めします。

 この場合、仕入先や得意先に対しては、第二会社を紹介し、今後は第二会社と取引してもらうよう依頼しておきます。そして会社は、機械等資産の売却代金を予納金等として破産申立てをします。

 このスキームで問題となるのは、資産等を簿価で第二会社に譲渡するに当たり債権者保護手続を経ていないということです。すなわち、この会社の実質的価値は簿価を超えるかもかもしれません。この超える部分は営業権(のれん)に相当します。しかし零細企業の営業権価値はほとんどゼロに等しいと思います。重要な特許権等知的財産権を有していれば別ですが、一般の零細企業の行う事業については、小資本で参入可能です。このように参入障壁がない事業の営業権価値(のれん)はほぼゼロといえます。

 以上から、家業的零細企業が簿価で資産を譲渡しても、それを知った金融機関等債権者が詐害行為取消権(民法424条)を行使したり、破産管財人が否認権(破産法160条以下)を行使することは、まずありません。仮に微妙な場合でも詐害行為取消権や否認権は、以下の理由により行使すべきではないと思います。

 もし、上記のような家業的零細企業が第二会社方式を利用せず、破産申立をした場合、価値ある事業が消滅し、従業員は失業します。そして経営者保証をしている経営者自身も破産することになります。家業的零細企業の経営者は普通高齢であり、失業して生活保護を受けることになります。

 すなわち、家業的零細企業が事業再生できなかった場合、従業員の失業により所得税等、国等の税収が減少するばかりでなく、失業手当や生活保護費等社会保障関係費が増加することになります。

 現在、国の最重要課題は税収を増やし社会保障関係費を抑制することです。上記家業的零細企業の事業再生方式は、この喫緊の課題に適合するものであり、当然に認められるものと考えます。

 家業的零細企業が上記の第二会社方式を採用した場合、多額の債務から解放されるばかりでなく、会社設立から2年間は消費税がかかりませんから、事業再生は順調に進みます。

 私の関与している会社で、この第二会社方式により再生し、現在は多額の法人税を納めるほどになっています。

投稿者 小山法律事務所 | 2017年6月28日 21:21

ページの先頭へ戻る