1足の靴が教えてくれたコト (弁護士 川野義典)

 ある日、仕事から帰ってきて革靴を脱いでみると、靴の中の「中敷き」が見事なくらいに割れてしまっていました。

 割れ目からは、白い緩衝材のようなものがはみ出ていました。 

 「あれれ。買ってから、まだそれ程間が経っていないのに」

 「気付かないうちに、酷使していたのかな?」

 「それとも、今日、何か悔しい思いでもして、地団駄踏むようなことでもあったっけ?」などとあれこれ考えてはみたものの、特にこれといった原因は思い当たりませんでした。

 とにかく、このままではいけません。何とかしなくては。

 お気に入りの革靴でしたし、何より「中敷き」以外は、まだまだ使える状態だったので、取りあえず、その革靴を買った靴屋さんに持って行ってみることにしました。

 早速、靴屋さんへ持って行くと、「ここまで割れてしまうだなんて珍しいですねぇ」「でも、大丈夫。中敷きをそっくり取り替えてしまえば直りますから」と、お店のおばさん。

 中敷きが割れたのは片方のみだったのだけれども、片方だけ新品となってしまっては、靴を脱いだときに、かっこ悪くなってしまうことから、結局、両方とも交換して貰うことにしました。

 「お代は2000円になります。取りに来たときにお支払い頂ければ結構ですから」。

 おばさんからそう言われたので、僕は、「よろしくお願いします」と言って、その店を後にしました。

 それから10日ほど経ったある日のこと。

 例の靴屋さんから修理が終わったとの連絡があったので、僕は再び靴屋さんへと向かいました。

 10日ぶりくらいに再会した革靴は、お店の人が磨いてくれたためか、前よりもずっと輝いていて、中敷きもすっかりキレイになっていました。

 「どうもありがとうございました」「これでまた前のように履くことが出来ます」そう言って僕が財布を取り出し、お代を支払おうとしたところ、靴屋のおばさんはニッコリ笑うとこう言いました。

 「今回はお代は結構ですから」「大切に使って下さいね」。

 朝、例の革靴を見る度に(あるいは、履く度に)、靴屋のおばさんの言葉がよみがえってきます。

 自分はまだまだ未熟ですが、いつかきっと人に優しくすることの出来る弁護士になりたい、そう思いました。



投稿者 小山法律事務所 | 2012年5月13日 09:00

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