法律Q&A

Q 私はA歯科医療法人の経営者で、B社が所有するビルの1室を10年前に借りて歯科医院を経営しています。最近B社の資金繰り悪化が噂になっています。B社ビルの登記簿謄本を確認したところ、やはり多額の抵当権が設定されていました。B社ビルが競売されたり、B社が破産した場合、私の医院はどうなるのでしょうか。またB社に差入れた300万円の敷金はどうなるのでしょうか。

[建物賃借権の対抗力]

<ご回答>

A B社ビルが競売された場合、借主である貴方のA医療法人が競落人(買受人)に建物賃借権を対抗できるかが問題です。

 不動産の賃貸借において借主の権利は債権であり、物権ではありませんが、物権と同様に登記ができることになっています(民法605条参照)。しかし登記をするには貸主の協力が必要で、一般に登記は行われていません。そこで、借地借家法は、建物の賃貸借においては、賃借人を保護するため、建物の引渡しがあったときは、登記と同様に、その後建物について物権を取得した者に対抗できる、としています(同法31条)。

 そこで本件では、B社ビルに抵当権を設定し登記をした抵当権者が競売を申立て競落された場合、当該抵当権設定登記の日付と貴方の法人が引き渡しを受けた日との先後で賃借権を対抗できるかが決まります。すなわち貴方の法人が本件ビルの一室を賃借して引渡しを受けたとき、本件抵当権者の登記がなされていなければ、貴方の法人はその抵当権者、さらに競落した買受人に賃貸借関係を対抗することができます。言い換えれば、本件賃貸借関係の賃貸人たる地位は、B社から競売の買受人に移転します。そして敷金関係も移転しますので、将来貴方の法人が退去するとき、買受人に対し敷金返還請求が可能となります。

 次に、貴方の法人が引き渡しを受けたとき、すでに本件抵当権設定登記がされていた場合、貴方の法人は買受人に本件賃貸借関係を対抗できません。したがって、買受人と新たな賃貸借契約をしない限り、退去することになります。この場合退去までの猶予期間は6か月です(民法395条)。そして本件敷金関係も買受人に引き継がれませんので、敷金返還請求権はB社に対して行使するしかありませんが、資金繰りが悪化しているので、返還はあまり期待できません。

 最後にB社が破産した場合を検討します。この場合、抵当権者は破産手続きに縛られずに抵当権を実行することができます(別除権)ので、抵当権者が抵当権を実行した場合は、以上述べたことと同じです。しかし破産管財人は、抵当権者の協力を得て、対象物件を任意売却することに努めます。その方が競売より高く売れるからです。そして任意売却された場合、買主は、貴方の法人が引渡しを受けた後に物権を取得した者となりますので、賃貸人の地位は当然に買主に移転します(借地借家法31条参照)し、貴方の法人が退去するときは、敷金返還請求権を新たな賃貸人に行使できます。

 したがって、賃借人への引渡しが抵当権者に対抗できない場合は、破産管財人が任意売却してくれると賃借人は助かります。

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