Q 私は、中小企業の人事部長をしていますが、先日当社の内部通報システムから、学生アルバイトのAさん(外国人)はオーバーステイだとの情報が入りました。そこでAさんに問い質したところ、その事実を認めました。私は、在留カードの原本は学校に預けているとのAさんの言い分を信用して、コピーだけで原本を確認しませんでした。そのコピーは、偽造在留カードをコピーしたものでした。そこでAさんの処分と、今後外国人を採用する場合の注意点をご教示ください。
<ご回答>
A オーバーステイ(不法在留)であるAさんは、当然解雇すべきことになります。しかしたとえ不法就労者であっても、労働基準法を始め労働法規は外国人にも等しく適用されます(労働基準法3条参照)。そこでAさんが偽造在留カードのコピーを提示したことが、御社の就業規則記載の懲戒事由に当たれば懲戒解雇処分となります。就業規則記載の懲戒事由に当たらなければ、普通解雇になりますので、労基法20条に基づき、30日前の解雇予告か30日分の予告手当を支払って解雇することになります。
次に外国人を採用する場合の注意点ですが、在留カードの原本確認は絶対に必要です。入管法は、不法就労者を就労させた者は不法就労助長罪で3年以下の懲役又は300万円以下の罰金と定めていて、しかも不法就労だと知らなかった場合でも過失があったら処罰されるのです(入管法73条の2第2項)。
本件でAさんが在留カードのコピーしか提示しなかったのは、学校に預けたからではなく偽造在留カードの行使は重い犯罪になるからです(入管法73条の3第2項)。Aさんは在留カード偽造組織から偽造在留カードを購入したものと思われます。そのためAさんから偽造在留カードの提示を仮に受けたとしても、それでは本物の在留カードの原本を確認したことにはなりません。そこで、今後は、在留カード等読取りアプリケーションなどで本物であることを確認してください。このアプリは出入国在留管理庁のホームページから無料でインストールできるようです。
そして本物であることを確認したら、その裏表をコピーして保管します。
また留学生については、学校に在籍し通学していることが資格外活動許可の前提ですから、定期的に在籍証明書を学校から取り寄せさせます。さらに、複数のアルバイトを掛け持ちしていないとの誓約書も取るべきです。原則週28時間以内という就労制限があるからです。
不法就労助長罪に問われないためには、事業者等に過失がなかったことを立証する資料を確保する必要があります。