法律Q&A

Q 私はトラック貨物運送業の会社を経営していますが、最近ドライバー不足とエネルギーの高騰で、会社の採算が急激に悪化し、給料の支払いも遅滞しています。そこで、同業のA社の資金援助が得られそうなので、民事再生を申立て、事業の存続を図りたいと考えています。具体的にどうしたらいいでしょうか。資金繰りは非常にひっ迫しています。

[民事再生と事業譲渡]

<ご回答>

 A いわゆる2024年問題が目前に迫り、ドライバーの不足は喫緊の課題だと思います。またウクライナ戦争を契機にエネルギーの高騰も企業の採算に悪影響を及ぼしています。

 そこで御社がA社から資金援助を受けて、民事再生手続により事業の存続を図るのは合理的です。しかし、単にA社から当面の運転資金を借りて民事再生を申し立てるだけではうまくいきません。これではA社からの借入分も他の債権と同様に再生債権になり、返済額は大幅にカットされてしまいます。

 A社債権を特別扱いし全額返済できるようにするためには、民事再生申立と同時に裁判所の許可を得てA社債権を共益債権にしてもらいます(民事再生法1201)。共益債権とされれば随時弁済することができます(同法1211項)。

 次に御社の事業の存続を図るためにはA社に事業譲渡することをお勧めします。確かにA社から得た資金を運転資金とし、A社以外の債務を大幅にカット(民事再生では数パーセントの弁済率が普通)すれば、御社独自で事業再生することも不可能ではありません。しかし一旦民事再生を申立てると、当分銀行借り入れはできず、信用を取り戻すには非常に長い時間がかかります。これが一般に民事再生の大きなデメリットなのです。そこでせっかくA社というスポンサーがいるのであれば、存続させたい事業をA社に譲渡し、A社の信用により事実上御社の再生を図るのが従業員等利害関係者のためになると思います。

 A社への事業譲渡の後、御社は再生手続きで、事業譲渡の代金を再生債権の弁済に充て、御社自身は清算されることになります。

 なお、会社の民事再生を申し立てる場合、裁判所に対する予納金が必要になります。東京地裁の場合、債務総額が1億円を超えますと予納金は400万円です。資金繰りがひっ迫している御社にとって、これはかなりの負担になると思いますので、裁判所の許可を得て、一部を申立て後に納められるようにしてもらったらよいと思います。また民事再生申立では弁護士への依頼は必須です。しかし代理人である弁護士の報酬は共益債権ですので、随時の支払が可能です。したがって弁護士報酬も当該弁護士とよく話し合い、分割払いにしてもらうことも可能です。

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