法律Q&A

私は従業員100名の建設会社に勤務し、人事を担当しています。先日うつ病で休職していた従業員(Aさん)が主治医の診断書を持参して従前の職務である現場監督に復帰したいと私のところに来ました。主治医の診断書には「通常勤務可能」と記載されているだけです。Aさんが職場復帰できるかどうか、見かけからはわかりません。どうしたらいいでしょうか。

[休職事由消滅の判断]

<ご回答>

休職制度は労働基準法に規定はなく、内容等は就業規則で定められます。貴方の会社でも、休職している従業員が職場復帰を希望するときは、主治医の診断書の提出を要求していると思います。それによって会社は当該従業員の休職事由消滅(病気の治癒)の有無を判断することが予定されています。

しかしうつ病のようにメンタルヘルス不調の場合、通常勤務可能な程度に回復したかどうかは見かけからはわかりません。そこで貴方は、Aさんの主治医から聞き取りをすべきです。一般に主治医が診断書を作成する場合、本人や家族の要望にできるだけ沿うようにすることがありますし、「通常勤務可能」といっても主治医には、Aさんが従前どのような職務に従事していたのか具体的には知らないと思われますので、貴方からAさんの現場監督としての具体的仕事内容を説明し、主治医の意見を書面でもらうことをお勧めします。なお病気についての聞取りは個人情報に関するものですからAさんの同意が必要です。この点従業員の協力義務を就業規則に記載しておくのが望ましいです。

そして、それでも休職事由消滅(治癒)の有無の判断ができかねるときは、会社の指定する専門医や産業医の診察をAさんに勧めるべきです。従業員は受診に協力する義務がある旨も就業規則で定めておくべきです。

専門医や産業医が主治医の診断書や意見書を参考にし、さらにAさんを診察し、診断書や意見書を作成してもらいます。

その結果、Aさんは従前の職務である現場監督に就労可能とされた場合、Aさんは職場復帰しますが、就労不能と判断された場合は、休職事由は消滅せず、休職期間満了により自然退職又は解雇となります。

もっともAさんが特定の職務(本件では現場監督)に限定されずに採用された場合で、Aさんが他の軽減された職務(例えば事務職)であれば就労可能であり、かつAさんもそれを希望しているのであれば、会社はAさんを他の軽減された職務へ配置する現実的可能性を検討する義務があります。その現実的可能性があるのにそれを無視して自然退職又は解雇としたときは、その退職等は無効とされます(片山組事件、最高裁第1小法廷平成10年4月9日判決参照)。

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