Q 私は2年前に自宅のベランダの修繕をA工務店に依頼しました。修繕工事は2日ほどで終わりました。ところが、1週間前に不具合が見つかりました。比較的簡単な工事だったので特に契約書をかわしませんでした。私はA工務店に無料で修補を請求できるでしょうか。
[請負契約]
<ご回答>
修繕工事をしてもらったのに、2年たって不具合が見つかったのですから、修繕工事が不完全だったと思われます。貴方はA工務店と契約書をかわしていませんが、口頭でも契約は成立します。この場合は、貴方がA工務店に、壊れたベランの修繕という仕事を依頼し、A工務店がこれを請け負ったのですから請負契約です。請負契約は仕事の完成を目的としますから、不具合があるということは、仕事は契約不適合ということになります。したがって、貴方が材料を提供しその材料に欠陥があったとか、貴方の指図が原因で不具合が生じた場合でない限り、A工務店は貴方に対し、契約不適合責任を負うのが原則です。A工務店に契約不適合責任があれば、貴方はA工務店に対しベランダの不具合につき、修補を請求できます。
しかし本件では、修繕工事は2年前に行われ、不具合が見つかったのがつい最近ということが問題になります。というのは、本件工事が行われたのは令和元年で、不具合が発見されたのが令和3年ですが、令和2年4月1日に改正民法が施行されています。改正民法637条によれば「不適合(不具合)を知った時から1年以内に請負人に通知」すれば修補請求できますが、改正前民法637条によれば「仕事の目的物を引き渡した時から1年以内に」請負人に修補請求しなければなりません。すなわち、本件で貴方は、改正後民法によればA工務店に修補請求できますが、改正前民法では修補請求できないことになりますので、どちらが適用されるのかが問題です。
これについては民法附則10条に経過措置が規定されています。それによりますと修補請求権発生の原因となる法律行為(本件では請負契約)の時が基準となります。したがって本件では請負契約は改正前民法のときに成立していますので、改正前民法が適用されます。よって修繕工事から1年以上経過しています本件では、残念ながら補修請求できないことになります。
上記民法の規定は任意規定ですから、契約で適用を排除できます。ですから請負契約を締結するときは、契約書を作成し合理的な補修請求権を確保すべきです。