私は、今年85歳になりますが、多少の財産がありますので、遺言を作成しようと考えています。遺言の内容については誰にも知られたくないので、自筆証書遺言を作成するつもりです。聞くところによると、自筆証書遺言の方式が緩和されたそうですが、どのように緩和されたのか、また作成上の注意点を教えてください。
<ご回答>
令和元年の民法改正により、自筆証書遺言の方式が緩和されました。それまでは、遺言内容全てを自筆で書く必要がありました。そのため不動産の目録の作成などは高齢者にとって非常に煩わしいものでした。不動産の目録は登記簿謄本どおりに記載しなければ、登記できず、無効になるおそれがありました。
そこで、新法では、遺言書本文は従前どおり自筆で書く必要がありますが、財産目録は、自筆でなくてもよくなりました。本人や他の者がワープロで打ったもの、さらに登記簿謄本や通帳のコピーを添付することも可能になりました。添付した財産目録には、別紙1、別紙2などと記載し、遺言書の本文で、別紙1の不動産は誰に相続させ、別紙2の預金は誰に相続させる、などと自筆で記載するのです。そして添付書類は、各頁に本人が署名・押印する必要があります。もし裏にも記載があるのであれば、裏にも署名・押印が欠かせません。押印は三文判でも結構です。
財産目録を訂正することもできますが、訂正方法は、訂正箇所に二重線を引き、訂正し、押印します。そして余白に何字削除何字追加などと書き、署名します。もっとも訂正箇所があまり多い場合は、読みにくくなり、トラブルの元になりますので、新しい財産目録を作成し添付すべきです。
通帳の写しを添付するときは、名義、金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号が記載されている頁をコピーし、金額を記帳してあるところはコピーしないことです。遺言を作成した後、金額が変動する可能性があるからです。
添付方法については特に規定はありませんが、遺言書本文と添付書類が一体であることを示し、トラブルを防止するため、ホッチクスなどで綴じて、契印もしておくのが無難です。
なお、遺言書の本文には当然、自筆による日付、署名、そして押印が必要です。
また、自筆証書遺言については、相続が開始したとき、家庭裁判所における検認手続が必要ですが、令和2年7月10日からは、自筆証書保管法が施行されますので、自筆証書遺言を法務局に保管する場合、検認手続は不要になります。