法律Q&A

私は40歳の主婦ですが、先日SNS上で酷い誹謗中傷を受けました。もちろん匿名です。私の生ごみの出し方が悪いとのことで、私の実名を挙げて罵る内容でした。しかも生ごみの出し方につき私には全く心当たりがないのです。このような投稿をした人物に心当たりはあるのですが証拠がありません。何とか名誉棄損で損害賠償請求をしたいのですが、どうしたらよいでしょうか

[SNSと誹謗中傷]

<ご回答>

ツイッターやフェイスブック等SNSの発達で、誰でも容易に情報を公開できるようになりましたが、他人の名誉を棄損したりプライバシーを侵害する情報を発信するケースが後を絶ちません。しかもこのような情報発信者は匿名の場合が多いので、被害者は泣き寝入りするおそれがあります。そこで一定の要件のもとで、発信者情報の開示を定めた法律が「プロバイダ等責任制限法」です。

 この法律に基づき名誉権等、自己の権利が侵害されたことが明らかな場合、プロバイダ等に対し、加害者を特定するに資する情報(発信者情報)の開示を請求できます。しかしSNS等におけるデーター送受信のシステムのプロバイダには、SNS等のサービスを提供するコンテンツプロバイダと、顧客である投稿者とコンテンツプロバイダを媒介するアクセスプロバイダが存在します。そこでコンテンツプロバイダに対し、誹謗中傷記事にかかるIPアドレスとタイムスタンプを開示してもらいます。IPアドレスは12桁の数字で、又タイムスタンプは誹謗中傷記事が投稿された時の日時を示します。これだけでは投稿者は特定できませんので、次ぎに、アクセスプロバイダに対し、このIPアドレス等に対応する契約者の住所、氏名、電話番号を開示してもらいます。

 しかし、発信者情報開示の要件は、権利を侵害されたことが「明らかである」とされています。一方、名誉を棄損する投稿でも、その内容が真実である等一定の要件を充たせば違法ではなくなります(これを違法阻却事由といいます)。そこで被害者が、誹謗中傷記事が真実でないこと等につき、ある程度証明しないとプロバイダ等は任意に発信者情報を開示しないのです。そのため被害者は、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダに対し、それぞれ訴訟等を提起することになります。前者に対しては、IPアドレス等の開示を求めて仮処分の申立て、後者に対して投稿者にかかる住所、氏名等の開示を求めて訴訟を提起することになります。これらによって投稿者が判明して初めて名誉棄損による損害賠償請求訴訟を起こせます。結局加害者に対する損害賠償請求が実現するまで3回の裁判が必要になります。

 もっとも、稀にですが、投稿者が沢山の人を誹謗中傷したため、匿名でも投稿者が誰であるか証明できる場合があります。私も昨年、プロバイダ等と訴訟をせず、投稿者を直接訴えて勝訴しました。貴方も弁護士に相談してみてください。

 

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