法律Q&A

私は、年間売上2億円ほどの製造業の株式会社を経営していますが後継者がいないので、M&A(株式譲渡)で会社を売却しようと思っています。会社の純資産は5千万円ほどで、経常利益は500万円程度です。会社の株式は私が100%所有しています。私の会社はいくらで売却できるでしょうか、凡その目安を教えてください。

[事業承継]

<ご回答>

中小企業がM&Aで会社を売却する場合、売却価格を決める要素となるのは、時価純資産価額と経常利益(又は営業利益)です。すなわち、

 会社の価値=時価純資産価額+経常利益×(2年分~5年分)

というのが、凡その目安になります。ここで、時価純資産価額は会社の資産を処分して負債を完済した場合の手取り額と考えてよいでしょう。

 そこで貴方の会社は純資産が5千万円とのことですが、時価純資産価額を算定する必要があります。そのためには、資産を個別に調査します。例えば資産の中で重要な割合を占める売掛金を検討してみましょう。これが全額1か月や2か月後に入金されるなら問題ありませんが、焦げ付いている売掛金があれば、その分は時価ゼロとして計算します。さらに棚卸資産についても、時価算定は注意が必要です。流行遅れで棚ざらしになっている商品などはやはりゼロ評価です。土地については、特に時価と簿価がかけ離れている場合が多いので、複数の業者に査定してもらうのが適切です。

 このように全ての資産を時価評価して負債を控除します。それが簿価純資産額を上回る場合は、上回った金額(含み益)の7割程度を簿価純資産に加算した金額が時価純資産価額となります。含み益を3割程度減額するのは、含み益を実現させたときは法人税等がかかりますので、その分を控除します。

 次に経常利益を2倍から5倍した数字は、いわゆる営業権を評価したものです。この評価額が高ければ、それだけ会社の儲かる仕組みがしっかりしていることを意味します。M&Aにおける売り手と買い手の交渉は、この営業権をいくらにするかのせめぎあいと言えるでしょう。

 事業承継でM&Aを利用するのであれば、日ごろから資産内容を見直し、できるだけ贅肉を落とし、高い自己資本利益率を達成することをめざすべきです。時価純資産が高ければそれだけ高く売れるわけではないのです。

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