法律Q&A

私は、水産加工卸を主たる事業とする会社を経営しています。年商は5億円で、昨年は500万円ほどの営業利益を計上していますが、純損益は400万円ほどの赤字です。その原因は、金融機関3行から合計3億円の借入があり、金利が3%で、年間900万円ほどの利息を支払っているからです。いろいろ経営改善計画を考えましたが展望が開けず、民事再生手続の申立を考えていますが不安もあります。民事再生手続のメリットとデメリットやその他の再生手続についてご教示ください。なお、私の会社は、資本金2000万円で、1億円の欠損金があります。

[事業再生]

<ご回答>

事業再生の方法には、法的再生と私的再生の方法があり、法的再生の代表的なものが、民事再生手続で、私的再生では、最近特定調停が注目されていますので、それぞれの手続のメリットとデメリットを説明します。

  民事再生のメリットは、税務上通常認められていない評価損を計上できることと、債権者の債権額及び頭数による多数決制がとられていることです。貴方の会社でいえば、工場敷地を1億円に評価替えできます。そのため、元々の欠損金1億円に土地評価損1億円を加えた2億円を債権カットをする再生計画を立てても税金はかかりません。また、金融機関3行のうち1行が反対しても、その債権額が過半に達しない限り認可される可能性が高いです。

  一方、特定調停は、あくまでも話し合いによる合意を原則としますので、金融機関が1行でも強硬に反対すると、調停は成立しません。また、特定調停では、評価損の計上は認められませんので、貴方の会社の場合、無税で債権カットできるのは、1億円までです。

  しかし民事再生のデメリットは非常に大きいです。すなわち仕入先等を含めた全ての債権者に対し支払停止の通知を出しますので、会社の信用が失墜し、売上が相当に減少するとともに、仕入等は現金ですることになります。また、申立てに当たり、裁判所に300万円ほどの予納金を納め、申立代理人弁護士にも同額程度の手数料が必要です。

  一方、特定調停の場合、相手にする債権者は金融機関だけで、仕入先等には特定調停の事実は知られませんので、通常どおり営業できます。また、裁判所(簡易裁判所)に納めるのは、印紙代だけですし、手続も比較的容易ですから申立代理人弁護士の費用も低額です。本件では、貴方の会社が民事再生申立てをした場合、各金融機関の取り分は非常に少なくなりますので、金融機関3行も特定調停での再生計画案に同意すると思います。

  以上から、私は、貴方の会社の場合、法的再生手続よりも、特定調停手続が向いていると思います。詳しくは、弁護士にご相談ください。

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