私は、石油プラントの修繕などを請負う会社を経営しています。従業員は、私の長男を含め4人です。年商は約6000万円で、営業利益は100万円(減価償却費は50万円)ほどありますが、銀行からの借入金が6000万円もあり、経常損益は約100万円の赤字です。現在銀行には金利だけ支払っています。このままでは借入金の元本は減らないので、将来の展望が開けず悩んでいます。でも長男は頑張ると言っています。会社には目ぼしい財産はありません。何とか会社を再生する良い方法はないでしょうか。
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<ご回答>
貴方の会社は経常損失を出していますが、会社の本業からの利益は100万円あり、年間キャッシュフロー(営業利益+減価償却費)は150万円のプラスです。したがって破産する必要はなく、事業再生は可能です。しかし貴方の会社は明らかに債務が過大です。一般に、不動産業などを除いて、債務が月商の6か月分に至ると債務過大といえます。貴社の場合、月商は500万円ですから、債務は月商の12カ月分にもなります。
貴方の会社の再生のためには、金融機関の債権カットが必要です。会社の民事再生申立ても考えられますが、この方法では、買掛先などの債務も棚上げにされ、会社は信用を失う可能性が高いですし、何より多額の費用がかかります。そこで、金融機関のみを相手方とする特定調停手続をお勧めします。この手続きは、事前に債権カットを含む再生計画案を作成し、原則として全ての金融機関の同意を得る必要があります。その上で簡易裁判所に調停申立をします。そして調停委員が計画案を確認し公正妥当なもので経済合理性を有するものと認められれば調停が成立し、再生計画案に沿って債権はカットされます。
この手続きは、民事再生手続と異なり、原則として全ての金融債権者の事前の同意が必要ですので、会社の事業や財務状況を十分に調査して金融機関に報告し、破産申立をするより債権カットに応じた方が金融機関に有利であると説得します。
貴方の会社には目ぼしい財産はないのですから、破産申立をすれば金融機関への配当はゼロです。しかし特定調停で6000万円の金融債権のうち5000万円をカットすれば、貴方の会社は、残金1000万円を10年間で返済できます。したがって金融機関にとって経済合理性が認められ、同意する方が有利です。また、以前、私的整理では、金融機関がなかなか債権カットに応じなかったのは、債権放棄に応じた金額につき損金処理ができなかったからですが、特定調停の場合は損金処理が可能になりました。
また金融機関に債権カットを同意してもらうためには、社長である貴方の経営責任を明らかにする必要があります。そこで、事業承継を兼ねて会社の代表取締役の地位をご長男に譲るべきです。貴方は多額の保証債務を負っていると思いますが、貴方も会社とともに特定手続を利用すれば、破産する必要はありません。