生命保険と相続放棄 私の父が先日亡くなりました。母は10年前に亡くなり、相続人は長男の私と、次男の弟A及び三男の弟Cの3人です。父の遺産は次のとおりです。
[相続]
<ご回答>
A 貴方は相続放棄をしていますので、お父様の相続に関しては相続人ではないことになります(民939条)。また貴方が受け取った6000万円の生命保険金は、民法上、相続や遺贈によって受けたものではありません。したがって本来相続税は課税されないはずです(相続税法1条の3)。しかし、お父様が生前自分の財産からに支出して保険料を支払っていたのですから、課税の公平の観点から、相続税法上では、これをみなし遺贈としています(相続税法3条1項1号)。したがって本件では、3人の課税価格の合計が相続税の基礎控除額を超えれば、貴方も相続税を納めることになります。また貴方は相続人ではありませんが、お父様の葬儀のために支出した費用は、葬儀費用として貴方の課税価格の算定上控除できます。
それでは貴方の相続税の概算額を算定してみましょう。
ⅰ 貴方の課税価格
貴方の課税価格は、6000万円-500万円=5500万円となります。
生命保険金の場合、500万円×法定相続人の数が非課税枠とされていますので、本件では500万円×3人=1500万円が非課税枠となります(相続税法12条1項5号)。しかし非課税枠を享受できるのは、保険金を受け取った相続人であり、貴方は相続人ではないので、非課税分はありません。弟さん2人は保険金を受け取っていないので、当然非課税枠を享受できません。
よって貴方の課税価格は、5500万円となります。
ⅱ Bさんの課税価格
Bさんの課税価格は、5000万円+500万円=5500万円となります。
Bさんの場合、お父様の宅地を相続していますので、小規模宅地の特例という税軽減措置も考えられますが、Bさんは自己所有の自宅を所有していますので、この軽減措置は利用できません。もし利用できれば最大8割もの評価減となるのですが、残念です。
したがって、Bさんの課税価格は、5500万円となります。
ⅲ Cさんの課税価格
Cさんは金融資産だけですから、5500万円となります。
以上から課税価格の合計は、5500万円×3=1億6500万円となります。これから基礎控除額3000万円+3×600万円=4800万円を控除すると1億1700万円となります。
この金額を貴方も含め法定相続人3人が法定相続分で相続したと仮定して、相続税額の総額を算出します。すなわち、相続税の総額は、
1億1700万円×1/3=3900万円
3900万円×0.2-200万円=580万円
580万円×3=1740万円
となります。
そして相続税の総額である1740万円を各人の課税価格で按分することになりますが、3人の課税価格は5500万円で同じですから、結局貴方の相続税額は1740万円÷3=580万円
となります。
貴方は相続放棄をしたのですが、多額の生命保険金の受取人になっていましたので、弟さんたちと同じ相続税額を納付することになります。