私は先日ゴルフに行き、クラブハウスの貴重品用ロッカーに50万円入りの財布を入れて鍵を掛けておきました。ところがプレーが終わってロッカーを開けましたら、財布が盗まれていました。その後犯人が捕まったのですが、50万円はすでに使われていて、犯人は無資力でした。私はゴルフ場に対して被害弁償請求したいのですが、可能でしょうか。
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<ご回答>
ゴルフ場の経営は、仮りに会社組織で営まれていなくても、いわゆる場屋営業として商法が適用されます(法502条7号)。そこで商法上、ゴルフ場に損害賠償請求ができないか検討してみます。
まず貴重品用ロッカーに財布を預けたことが、「寄託」に当たれば、ゴルフ場は場屋の主人として無過失責任を負います(法594条1項)。しかし、寄託とは、物の保管を約しこれを受領することにより成立しますが、ゴルフ場のロッカーは、ゴルフ客が自由に使用し、ゴルフ場経営者は客がいつ、何を預けたのかわかりませんから、寄託には該当しません。
しかし商法594条2項は、客が寄託をしなくても場屋に携帯した物を盗難等された場合、場屋の主人又は使用人に不注意があるとき、場屋の主人は責任を負うことになっています。
そこで、本件では、ゴルフ場に不注意があったかどうかで結論が異なります。
ゴルフ場の責任を認めた判例のケースは、貴重品用ロッカーがフロントから見える所に設置され、フロント係が常に不審者がロッカーの近くにいないか確認していた場合です。一方、ゴルフ場の責任を否定した判例のケースは、貴重品用ロッカーがフロントから見えないところに設置され、ゴルフ場の従業員が監視していなかった場合です。
また商法595条は、客が高価品を預ける場合は、その種類及び価格を明告して主人に預けなければ損害賠償できないと規定しています。これは客が高価品を預けた場合、その価額等を知らない場合にまで場屋の主人に高額な損害を負担させるのは酷だからです。
本件では50万円入りの財布をロッカーに預けたもので、ゴルフ場経営者は客が貴重品用ロッカーにその程度の金額の入った財布を入れることは十分に予想できますから、ゴルフ場経営者に不注意があった場合、責任は免れないと思います。
したがって貴方のケースでは、クラブハウスのロッカーが、フロントから見えないところに設置され、従業員が監視していなかったのであれば、ゴルフ場側に不注意が認められ、損害賠償が可能だと思われます。