Q 私の父が先月亡くなりました。遺産といえるものはほとんどありません。しかし父は1年前に兄に自宅の建築資金として200万円を贈与し、5年前に姉が結婚するときに700万円を贈与しています。同じ兄弟なのに、私には全く贈与はありませんでした。私は兄や姉にいくらか請求できないでしょうか。なお、母はずっと以前に亡くなっています。
[相続]
<ご回答>
A 貴方は遺留分減殺請求権を行使できます。この場合、遺産はほとんどありませんのでそれをゼロとします。しかし生前贈与を遺産に持ち戻し(加算し)ますので、遺留分算定の基礎となる財産は900万円となります。これに貴方の遺留分割合6分の1(法定相続分3分の1の2分の1)を乗じた額が貴方の遺留分です。すなわち貴方の遺留分は150万円となります。貴方は父親から全く贈与を受けていないのですから、150万円全額の遺留分を侵害されたことになります。
遺留分減殺請求権は、新しい贈与から順に行使します(民法1035条)。したがってまずお兄さんに請求し、それで十分でなかったら、お姉さんに請求していくことになります。
そこで貴方はお兄さんに対し50万円をまず請求し、残り100万円をお姉さんに請求することになります。
兄さんにも150万円の遺留分がありますので、お兄さんには50万円しか請求できないのです。
遺留分減殺請求権は、原則としてお父さんが亡くなったときから1年以内に行使しなければなりません。
なお、民法1030条では、贈与の場合、原則として1年以内のもものでなければ減殺の対象にならないとされていますが、これは共同相続人以外のものに贈与された場合であり、共同相続人間の場合は民法903条が適用され、期間の制限はありません。