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当社は、従業員50人からなるIT関係の会社です。

入社して間がない従業員の中にはIT関係の基礎的知識が不足している者もいます。そこで、当社はそのような従業員に対しスキルアップを図るため、WEB学習を推奨しています。さらにWEB学習の便宜を図るため、勤務時間終了後に学習できるように、希望者には教材とパソコンのある部屋を用意しています。

しかし、先月、WEB学習をした従業員から、それにかかる残業代を請求されました。このような場合でも当社は残業代を払わなければならないのでしょうか。

質問者

御社でWEB学習をしていた従業員の行為が労働時間と評価できるかが問題です。労働時間の概念について最高裁は「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」とし、「労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるかにより客観的に決まるのであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めいかんにより決定されるべきものではない」と判示しています(最高裁平成12年3月9日判決)。

 

すなわち労働時間性の判断基準は、当該労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれていたかどうか、言い換えれば、業務上の指示に基づくものかどうかであります。

 

具体的にWEB学習の労働時間性について判例は、次のように判示しています。

 

IT関係の会社が、従業員の将来のために所定の知識を身につけさせる必要があったことから、従業員に対してWEB学習等によるスキルアップを推奨していたこと、上司もWEB学習終了程度の知識を明示的に求めていたこと、チャレンジシートに通信教育等による自己啓発を記載するよう求めており、WEB学習の状況は社内にシステムで把握されていたという事案で、第1審裁判所は、労働時間性を認め、残業代の支払いを命じました。しかし控訴審は、「WEB学習は、会社が従業員個人個人のスキルアップのための材料や機会を提供し、各従業員がその自主的な意思によって作業することによってスキルアップを図るものであると言える。したがって、WEB学習の推奨は、まさに従業員各人に対し自己研鑽するためのツールを提供して推奨しているにすぎず、これを業務の指示とみることはできないとし、残業代の請求を棄却しています(大阪高裁平成22年11月19日判決)。

 

すなわち会社がWEB学習を推奨し、それが従業員個人個人のスキルアップのためであり、会社がその便宜を図っただけであれば、労働時間とは認められないとのことです。

 

御社の場合も、WEB学習を推奨し、希望者に対し、教材や場所を提供して便宜を図っただけですので、原則労働時間性とは認められず残業代を支払う必要はありません。しかし、「希望者に対し」、といっても、参加しない従業員を不利益に扱う等、事実上強制している場合は、業務上の指示と言えますので、注意してください。

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