私は、横浜で中小企業の社長をしていますが、先日、青森県で農業をしていた父(90歳)が亡くなりました。相続人は、父と農業をしていた長男、次男の私、そして大阪に住んでいる三男、それから島根県に住んでいる亡長女の子供2人と、福島に住んでいる亡四男の子供3人で、合計8人です。遺産は田畑2町(約2ヘクタール)と預金300万円です。私は、田畑は全部兄が取得し、預金を他の相続人で分けるのがベストと考えますが、全国に分散している相続人はあまり関心がないので、遺産分割協議書に署名押印してくれるか不安です。どうしたらいいでしょうか。

遺産分割が成立するためには、相続人全員が遺産分割の方法に賛成し、不動産や預金がある場合は印鑑証明書と実印の押印が必要になります。しかし、換金性の高い遺産が少ない場合全員の協力を得るのはなかなか困難です。本件のように相続人が全国に散らばり、疎遠になりがちな代襲相続人も何人かいる場合は、特に困難です。
このような場合は最初から家庭裁判所への調停申立てがよいと思います。そして貴殿がお兄さんを相手方として青森家庭裁判所に調停を申立てるのがよいと思います。相続人なら誰でも他の相続人の住所を管轄する家庭裁判所に調停を申立てることができますが、調停不成立となった場合には審判手続へと移行します。そして審判手続の管轄裁判所は被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所と法定されていますので、本件では青森家庭裁判所となります。ですから調停も青森家庭裁判所に申立てるのがよいと思います。この場合貴殿が弁護士を代理人として調停申立てを行なえば、実際に青森家庭裁判所に調停期日の度に出頭しなくても電話会議システムを利用できます。お兄さんは期日に青森家庭裁判所に出頭し、貴方は調停期日に依頼した弁護士事務所に出頭することになります(非訟事件手続法47条、家事事件手続法54条)。
この場合、8人の相続人全員が貴方やお兄さんのように裁判所や依頼した弁護士事務所に出頭することは、まず期待できないでしょう。遠くにいる姪っ子さんや甥っ子さんの場合は裁判所から書面が届いても興味を示さず、裁判所への出頭はもちろん、電話での参加もしないかもしれません。
そこで、青森家庭裁判所の調停委員は、参加した相続人だけを相手に調停を進めます。貴殿が考えている遺産分割案を調停申立書に記載しておけば、調停委員はその案について他の相続人の意見を求めるでしょう。そして参加した相続人に特に反対がなければ、調停委員会を主宰する裁判官が貴方の調停案をもって解決案とする、調停に代わる審判をするかもしれません(家事手続法284条)。
調停に代わる審判とは、調停は成立しなかったが、裁判官が相当と認める場合、当該調停案をもって審判し、これを当事者全員に送達し、2週間以内に当事者から異議が出なかった場合、当該審判が確定する制度です。この場合、裁判所から郵送したけれども当該住所に当事者が住んでいなかった場合、送達はなかったことになり審判は成立しません。8人のうち1人でも行方不明の人がいると成立しませんので、申立の段階でこの点よく調査しておく必要があります。ですから申立て準備の段階から弁護士に依頼することをお勧めします。